巨大な穴に飲まれる町

ペルーの町セロデパスコは、標高4300メートルほどの山間にあり、地球で一番高地にある町の一つ。小柄だが精力的な女性国会議員、グロリア・ラモス・プルデンシオ氏は、人口7万人のこの町の出身だ。
この10年ほど、中南米諸国の鉱業収益は3倍の3000億ドルに急増したという。特に、最も成長著しいペルーでは、国内総生産の6分の1を鉱業が占めている。そのあおりで今、ペルー鉱業の中心地で400年の歴史を持つセロデパスコの町が、露天掘りの採掘穴に文字通り飲み込まれようとしているというのだ。
操業しているのはペルーの企業であるボルカン鉱山の子会社だ。縦1600メートル、横800メートル、深さ400メートルの階段状の巨大な穴のせいで、住人たちは避難を余儀なくされている。鋼板製のさびた屋根の空き家の列が、人が住む町との境界になっている。
だが、その程度の境界では住人、特に子供たちを鉱毒から守ることはできない。セロデパスコは世界で一番鉛の毒に汚染された町の一つだ。
1950年代に亜鉛と鉛が採掘されるようになり、当初はトンネルを使って採掘していたものが国会議員のグロリア・ラモス氏が生まれた1年後には、より効率の良い露天掘りに変わったという。ところが、鉛と亜鉛の最大の鉱脈が中心部の直下に眠っていることが明らかになったそうだ。
「町の中心部には、かつては外国領事館や歴史的建物がありました。でも、露天の穴がすべてを飲み込みました。最近、1960年代に建てられた地区まで穴の中に消えてしまいました」とラモス氏は言う。穴に住まいを奪われた住人は半数に上るという。
湖や川が鉱山からの流出物でオレンジ色にしまったため、セロデパスコには飲用水がなく、子供たちは鉛中毒に侵されている。
責任の所在ははっきりしないという。2008年にラモス氏がセロデパスコを全面的に移転させる法案を満場一致で通過させたが、その法律には誰が費用を負担するのかと言う致命的な問題があった。代替え地を調査するために200万ドルを計上したが、鉱山省も金融省も委員会を無視するので何も変わらなかった。住民は今も戦っているという。いつになったらこの戦いは終えることができるのだろうか…。